研究概要 |
ソバ属における種間交雑による育種を進めるに当たり,その材料となるソバ属10種(栽培種2種,野性種8種)間の交雑可能性を推測するために,相互交配を行い花粉の発芽と花粉管伸長を調査した. その結果,ソバ属内を2グループに分けることができた.そしてそのグループ内の種間では花粉管が低率ながら胚珠に到達することを観察した.さらに自家和合性種を種子親とした方が受精率が高いこと,長い花柱を持つ種の花粉がより高い花粉管伸長能力を持つことを明らかにした. 以上の結果に基づき,普通ソバ(F.esculentum;F.e),ダッタンソバ(F.tataricun;F.t),宿根ソバ(F.cymosum;F.c),F.giganteum(F.g),およびF.homotropicum(F.h)間の交配をおこなった. その結果,F.h×F.eでは雑種種子が得られたが,その他の交配組み合わせでは,交雑胚は受精後1週間以内に発達を停止し,落下した. そこで,胚珠を摘出し,胚珠培養をおこなったところ,F.e×F.c,F.e×F.t,F.e×F.g間の雑種個体を得た.このことからソバ属の種間雑種作出において胚珠培養が有効な手段であることが認められた. 得られたF.e×F.g間のF_1は自家和合性を示した.F.gはF.tとF.c間の複二倍体種間雑種であり,F.tの自家和合性がF.gを通じて導入されたと考えられる。F.eとF.tの雑種獲得はきわめて困難であることから,F.tの有用形質を普通ソバ(F.e)に導入するための貴重な育種材料と考えられる. F.h×F.e間のF_1は非常に旺盛な生育を示した.さらに異型花柱性を示さず,自家和合性で,高い種子稔性を持った.したがって,普通ソバ(F.e)に自家和合性を導入するための有用な素材が得られた.
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