研究概要 |
Oryza glaberrimaの持つ普遍的形質の遺伝的解明と育種的利用を目的として,Marker Aided Selection(MAS)によるOryza glaberrima染色体置換イネの作出とそれらの形質評価を行った. 台中65号(Oryza sativa L.)にO.glaberrimaを交配したF_1に,台中65号を戻し交配して得られた65個体からなるBC_1F_1集団をもとに,RFLP地図を作成した.RFLP地図は,101マーカーからなり,マーカーの配列およびマーカー間の距離は既報の日印交雑による地図と同じであった.マーカーの分離はほとんどの領域で正常だったが,染色体6のXNpb209からXNpb172の領域では,glaberrimaの対立遺伝子が高い頻度で後代に伝達した. 次に,44個体のBC_1F_1に由来する99個体のBC_2F_1を用いて,出穂期と花粉稔性のQTL解析を行った.その結果,出穂期に関しては,染色体1,6,10で1%水準で有意な領域が検出された.染色体1,6のものはglaberrimaの遺伝子が出穂を遅くする方向に働き,染色体10のものは逆であった.花粉稔性に関しては,染色体3,7,10に有意な領域が検出され,いずれもヘテロ接合体の稔性が低かった.染色体10のものは強い作用を持ち,XNpb333近傍の領域でglaberrimaの染色体を持つ個体の花粉稔性はほぼ0%だった. 染色体置換イネの作出は,BC_1F_1,BC_2F_1,BC_3F_1において,個体数約100,選抜マーカー数約100の規模でMASを滞りなく進めた.現在,B_3F_2世代900個体のMASにとりかかっている.
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