|
果樹花粉の凍結乾燥処理方法および貯蔵条件による発芽力等への影響をみた。9年度はとくに、20-25年間の長期保存花粉の発芽力および受精能力の保持状態をみた。
1.花粉の凍結乾燥方法による影響
各種果樹花粉について、採集後-20℃で保持し、25-150mmHgで凍結乾燥し、減圧下で封栓を行った。乾燥時間は15分程度、含水率3-5%で比較的良い結果が得られた。
2.貯蔵条件による影響
凍結乾燥した花粉を各種の条件下で貯蔵した。室温条件においた場合は短時間で、5℃においた場合は数年で、発芽力の不安定化と低下、消失がみられた。-20℃以下においた場合は、きわめて良好で、発芽力低下がほとんど認められなかった。なお、凍結乾燥していない花粉は、-20℃で貯蔵しても、長時間後では発芽力が低下した。
3.長期貯蔵花粉の生存確認
20-25年前、凍結乾燥して-20℃で保存していたニホンナシ(品種長十郎)その他の長期貯蔵花粉について、人工発芽床における発芽力検定と、授粉による受精能力検定を行った。24年後で、発芽力は、新鮮花粉の約70-80%に対し50-80%と良好で、僅かに低下していたが、花粉管の伸長は正常であった。また、他品種(幸水)への授粉試験では、ほぼ正常な結実率(56%)を得、成熟時の種子数も正常であった。さらに、25年長期保存してあった花粉も、開封後1-2時間再吸湿させると、正常に発芽した。
このようにナシの花粉では、凍結乾燥と凍結保存により、25年以上の長期貯蔵が可能であることを実証した。
|
