【本研究の目的】ウメや花モモの源平咲き系統は1個体中にピンク花をつける枝と白花をつける枝を持つ。本研究ではこれらの花色変異に関与していると考えられるトランスポゾンを単離し、その構造と転移機構、植物の花色遺伝子の発現に対する制御機構を明らかにすることを目的としている。 【成果と今後の計画】花モモの花色の異なるそれぞれの枝(ピンク花、白花)とウメの白花系統「甲州小梅」から抽出した全DNAを鋳型としてPCR法によりアントシアニン合成系遺伝子群を増幅した.DFR遺伝子のプライマーを用いて得られた増幅産物をクローニングし塩基配列を調べたところ、鋳型として用いたDNAがピンク花由来か白花由来かに関係なく、どのクローンもバラのDFR遺伝子と82%以上のホモロジーを示した。またANS遺伝子のプライマーを用いて得られた増幅産物もクラブアップル(リンゴの台木系統)のANS遺伝子と88%以上の高いホモロジーを示した。このようにして得られた花モモのDFR遺伝子とANS遺伝子のクローンをプローブとして用い、非RI標識によるサザンハイブリダイゼイションを行ったところ、両方のプローブでそれぞれ花モモの花色の異なる枝間で多型と見られるシグナルが検出された。このことはDFR遺伝子とANS遺伝子の中か近傍にトランスポゾンの挿入や切り出しによる多型が生じている可能性を強く示唆している。現在花モモの花色の異なる各枝についてジェノミックライブラリーを作成し、DFR遺伝子とANS遺伝子の単離を試みている。今後は全塩基配列を決定し花色変異に対するトランスポゾンの関与を明らかにするとともにトランスポゾンの単離と構造解析を試みる。さらにDFRとANS遺伝子以外のアントシアニン合成系遺伝子群を単離しこれらをプローブとしてサザンハイブリダイゼイションを行い花色変異に対応する多型の有無を確認する。またRtPCR法を用いて蕾の発育に伴うアントシアニン合成系遺伝子群の発現の変化を調べる。
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