1.各器官における窒素の蓄積と子実への再分配に関する調査 昨年度に3品種を用いて熟期による差異を検討したのに続き、今年度は品種エリモショウズを播種期を変えて栽培し(5月標準播と6月晩播)、生育相の影響をみようとした。しかし、5月の低温により標準播の出芽が遅れ、両播種日間の生育経過、形態形質および子実収量にほとんど差がなかったため、データは播種日を平均し、前年のエリモショウズとの比較をするにとどめた。1996年の乾物および窒素の蓄積量は前年の約6割にすぎず、各器官の窒素濃度もやや低く経過したが、栄養器官から子実への再分配は乾物で17.5%、窒素で32.1%で、前年とほとんど変わらなかった。 2.子実タンパク含量の品種間変異に関する調査 前年に2場所(札幌と芽室)で栽培して得られた100品種の子実について、100粒重、窒素および種皮色を測定した。前々年のデータを含む4環境を平均すると(88品種)、タンパク含量率には22.0%から27.6%までの品種間変異がみられたが、半数強の品種が23.0-24.5%の狭い範囲になった。また、環境との交互作用が大きく、タンパク%の広義の遺伝力は0.40で、粒大(0.85)に比べかなり低かった。品種のタンパク%と粒大との間には負の有意な相関が見いだされた。(-0.329**)。しかし、種皮色の濃淡(赤単色74品種)はタンパク%と関係がなかった。 3.交配分離集団におけるタンパク含量の調査 タンパク含有率に関する狭義の遺伝率を推定するため、北海道立十勝農業試験場において交配した2組合せ(「十育134」号×「斑小粒系-1」、「十系598号」×「十育133号」)のF2(1995年)およびF3系統(1996年)から得た子実について窒素を分析中である。
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