アズキは東アジア諸国に栽培と利用が限られる作物であるが、子実には24%前後のタンパクが含まれ、油料用を除く他の食用豆類と同等あるいはそれ以上の栄養価値を有する。本研究は、アズキをタンパク源として見直し、その改良のための基礎資料を得ようとして行われた。 1.生育に伴う乾物および窒素の蓄積と再分配:1995年に熟期の異なる3品種(サホロショウズ、エリモショウズ、アカネダイナゴン)を、1996年に1品種(エリモショウズ)を栽培し、各器官(落下分を含む)における乾物と窒素の蓄積経過、それらの栄養器官から子実への再分配を調べた。葉身、葉柄、茎における乾物と窒素の蓄積は、開花から20日間に急増した後減少した。減少分から算出すると、莢実に蓄積された乾物の19%および窒素の36%が茎葉からの再分配に依存していると見なされた(品種や年次間の差は小さい)。また、再分配された乾物と窒素はそれぞれ43%、75%が葉身に由来した。葉身の窒素濃度は開花後20日まではほぼ4%を保ち、その後減少して落下時には2%になった。子実の窒素は開花後20日頃から最後まで4%(タンパクで25%)前後を維持したが、後生の花に由来する子実では窒素濃度がやや低かった。 2.子実タンパクの品質間変異と環境の影響:外国産を含む品種を2年(1994年、1995年)および2場所(札幌と芽室)で栽培し、タンパク含有率の品種間差異とその安定性を検討した。4環境の平均値によると、タンパク含有率には22.0%から27.6%まで変異がみられたが、半数強の品種が23.0-24.5%の狭い範囲内にあった。環境との相互作用は大きく広義の遺伝率は0.40で、粒大(0.85)に比べかなり低かった。タンパク含有率と粒大の間には負の有意な相関(-0.329**)が見いだされたが、種皮色とは無関係であった。
|