1.マメ科のリョクトウの葉肉プロトプラストとアズキの培養細胞由来プロトプラストを電気的に融合させ、融合細胞を電子顕微鏡で観察したところ、リョクトウ由来の葉緑体とアズキ由来のプロプラスチドは、それぞれまとまって融合直後の位置に分布する傾向を示した。その後の分裂過程で、いくつかの細胞では葉緑体の娘細胞への不均等分配が観察された。 2.代謝阻害剤ヨードアセトアミド(10A)のアズキプロトプラストに対する影響を調べたところ、粗面小胞体の過剰な形成が起こり、その後細胞質が崩壊したが、10Aを処理していないリョクトウプロトトプラストを融合させたところ、10Aによる微細構造変化の出現は抑制された。 3.タバコ葉肉プロトプラストと、ダイズ培養細胞由来プロトプラストを融合させ、親プロトプラストの分裂活性が異なる条件下で培養した。分裂後の娘細胞においてタバコ由来の葉緑体が脱落したものの出現率を調べたところ、ダイズプロトプラストのみが分裂する条件では6%、両者とも分裂する条件では2%であったが、タバコプロトプラストのみが分裂する条件下では脱落は認められなかった。従って、親プロトプラストの分裂に不適当な条件では、その親由来のオルガネラが脱落する率が高くなると考えられた。 4.ヒユ科のC_3であるケイトウとC_4植物であるハゲイトウのプロトプラストを融合させ、雑種カルスを得た。カルスの雑種性は酸性フォスファターゼのアイソザイムパターンより確認した。 本研究の結果より、遠縁種間のプロトプラスト融合においても、不和合成反応は直ちに起こるのではなく、オルガネラの脱落は、分裂の進行に伴うオルガネラの不均等分配によって徐々に引き起こされることが推察された。
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