ヤムイモ塊茎の生長に関与する生理活性物質の作用を検定できる「ミニ塊茎テスト」とクロマトグラフィーを併用して、ヤムイモ塊茎の肥大生長現象に関与すると推定される生理活性物質の検索並びに同定・定量を行った。 生育中期にヤムイモ植物に短日処理を施し、塊茎の肥大生長を誘導すると同時に葉に内生する生理活性物質を検出した。また、塊茎の肥大生長が停滞から生長へと転換する夏から秋にかけて、葉に内生する生理活性物質を経時的に検定した。短日処理後並びに肥大生長の転換期に活性が大きく変動した生理活性物質について、カラムクロマトグラフィーによって精製を行い、ガスクロマトグラフィーで同定及び定量を行った。 ガスクロマトグラフィー分析の結果、(1)塊茎の生長の転換時に促進活性が大きく変化した生理活性物質は、ジャスモン酸であると同定された。(2)内生するジャスモン酸は、肥大生長の停滞期である7月、8月には微量であるが、生長の開始期である9月以降に急増する。(3)塊茎の肥大成長期における葉に内生するジャスモン酸含量は、178.6μg/Kgであることが明らかとなった。ヤムイモ塊茎の肥大生長現象に関するこれまでの解析から、ジャスモン算がヤムイモ塊茎の肥大生長に深く関与していることはほぼ間違いないと推定された。 生育初期及び中期にジベレリンを葉面散布した場合、分枝の生長が完全に抑制されるために地上部の生長は抑制され、塊茎の肥大生長は逆に促進され、塊茎は肥大した。これはヤムイモがジベレリンに対して特異的な反応を示す植物であることを示すものであり、興味ある現象である。
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