1.熊本県の代表的河川である白川と菊池川の挺水植物帯で生育するヨシ群落を選定し、その一部を刈り払い整地して水稲苗を移植し、ヨシとイネの生育の比較を試みたが、夏期の豪雨によって試験場所が流失し、初年度の調査研究は中座せざるを得なかった。 2.水田で栽培される冬作物・イグサに着目し、これまでほとんど明らかにされて来なかった地下部について観察した結果、根群分布と植物遺体の残存程度とは密接な関連があり、根群形態は収穫1ケ月前に最大に達すること、1株の茎数(50〜500本)と根数と間には高い相関があり1本の茎につき2.5本の不定根数があることを明らかにした。自然農法では慣行農法に比べ茎数増加が著しく遅延し、収量(本数)は56%であり、吸収した窒素含有量(59%)とほぼ同様であったが、1m乾茎重は118%となり、窒素吸収量/施用量は自然農法では39%で、慣行農法(31%)より高くなっていることが見出された。 3.挺水植物帯と類似した条件と考えられる合鴨水稲同時作と鯉農法の場合、土壌表層部撹拌効果は深さ2cm内外で浅いことがわかった。また、不耕起状態で、しかも、イナワラのみの還元が行われた自然農法水田で移植栽培された水稲の生育、収量ならびに根群形態を、熊本県阿蘇郡、菊池郡及び人吉市の場合を観察した結果、収量は周辺の慣行農法水田(倒伏した場合もあった)とほぼ同様か、あるいは、高くなっていた。根群形態、とくに、土壌表面より深さ20cmに達した冠根の発達の様相は水田間でことなっていることが見出された。 4.イナワラ還元を主体に栽培された自然農法水稲栽培の内、コシヒカリについて収量と収量構成要素を13県についてまとめ、雑草生育が抑制されるメカニズムの一端を紹介した。
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