1.河川および溜め池の辺縁部に位置する挺水植物帯ならびに自然農法、有機農法、慣行農法水田より表層部土壌を採集し、1/5000aワグナーポット充填し、無施肥条件下で水稲を栽培した。収穫期に得られたポットワラ重と挺水植物帯のバイオマス量ならびに水田における水稲地上部全重との間には有意な正の相関関係が認められ、土壌生産力を推定する方法として有効であった。無施肥であった不耕起水田および半不耕起水田と挺水植物帯の場合にはほぼ直線となる極めて高い有意な正の相関関係が認められた。 2.溜め池の挺水植物帯土壌断面を観察した結果、いわゆる、微粒子層の厚さが30cm以上に及んでいることが見出され、河川の挺水植物帯土壌とは著しく異なっていた。 3.挺水植物帯および自然農法水田より土壌を採集し、湛水静置土壌培養法によって土壌からの窒素無機化量を分析した結果、溜め池の挺水植物帯土壌の窒素無機化量は水田より遥かに高くなっていた。溜め池の挺水植物帯土壌のC/N比は10-13であり、完熟堆厩肥の20に比べ低くなっていた。 4.挺水植物帯土壌に見られる微粒子層を水田で再現できれば、雑草の発生は僅少で、水稲収量も慣行農法並みかそれ以上に達することが認められた。とくに、熊本県内の乾田条件下の水稲半不耕起栽培で、この関係が初めて見られ、水稲栽培上注目すべき技術であると思われる。 5.日本における自然農法、有機農法などの環境保全型農業を含めた永続農業の歴史、現状と将来への展望に関する総説を試みた。とくに、畑地や樹園地などにおける土作りの原理は森林原野生態系における有機物循環であり、水田では河川湖沼生態系の挺水植物帯における有機物循環であることを比較した。
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