まず、果実内の糖の遺伝を解析するにあたって、交雑に用いる花齢、果実を採取する時期などについての予備実験を行った。その結果、 1)開花前に開葯し、蕾内で自家受粉をする場合があるので、交雑には開花2〜3日前(花弁が観察され始めた時期)の花を供試する必要があること、 2)12月から翌年5月までの期間に果実の収穫が行われる促成栽培では、収穫時期によっても果実中の糖含量が変化するが、頂花房の数果を用いることで品種・系統間での比較が可能であること、 3)成熟に伴う糖含量の変化を調査したところ、果皮が100%着色した後も糖含量が多くなる品種・系統があること、 4)糖含量は日変化するので、果実の採取は一定の時刻にする必要があることなどを明らかにした。 次いで、果実内の糖含量および糖蓄積型の異なる個体を作出するために、平成7年度には糖蓄積型の異なる‘麗紅'と‘とよのか'との相互交雑から130個体を得た。この集団から無作為に20系統を選定し、それら7系統については‘とよのか'との相互交雑、12系統間での交雑、13系統の自殖を平成7年4月から6月までの間に行い、1250個体を作出した。これらの交雑および自殖の実生と、各系統および親品種の苗は本圃で栽培し、現段階では育成途中にあり、結果は得られていないが、今後は果実内の糖含量の分析、遺伝力などの解析を行う予定である。
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