ノビル(A.grayl)の不稔性系統を用い、cDNAライブラリーを作製した。cDNAは200から900bpの範囲でスクリーニングし、現在までに138のcDNAプローブが得られている。また、FISH法におけるシグナルの検出法について検討したが、その結果、800から900bp程度のプローブであれば、増幅を反復することによりシグナルを検出できることが明らかとなった。さらに、400から500bp程度のプローブも増幅を繰り返すことにより、シグナルを検出できる見通しもついた。得られたすべてのcDNAプローブを一本鎖にした後標識し、ゲノムDNAとフィルター上でハイブリダイゼーションさせて、シグナルの強く現れるプローブをスクリーニングした。その結果、In situハイブリダイゼーションに使用できると思われるプローブは、現在までに18得られている。FISH法でのシグナル増幅法の検討に多大な時間を要したため、染色体標本上でのInsituハイブリダイゼーションは始めたばかりの段階であるが、蛍光観察でいくつかのプローブにおいて、染色体上でシグナルが肉眼で確認できた。当初、800bp程度のプローブではハイブリダイズしても蛍光シグナルは可視観察が不可能であると思われたが、前述のシグナル増幅により可能であることが検証された。今後はcDNAライブラリーの作製をさらに進め、できるだけ多くのcDNAを収集すると同時に、In situハイブリダイゼーションに使用可能なプローブをスクリーニングする。また、本研究の目的にあうFISH法も確立されたことから、平行して染色体標本上でのIn situハイブリダイゼーションを進め、ノビルの染色体構成および稔性、不稔性系統間の染色体構造変異を解析する。
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