これまでにcDNA由来の800〜900bp程度の150プローブを得た。これを標識してハイブリダイズさせたが、蛍光シグナルの弱いものが多く、二次抗体を用いるなどして感度を高めた。これにより、合計24のプローブが現在までにスクリーニングされ、in situでのハイブリダイゼーションを開始している。しかし、24プローブで標識される染色体は、32本中24本で、残り8本は識別できず、全染色体の構成を確認するためにはさらに多くのプローブを必要とした。cDNA由来のプローブは技術的にこれ以上得ることは難しく、他の方法によらねばならないと考えられた。そこで本年度はrDNA由来のプローブを作出することとした。様々な試行から、酵素解離した細胞をスライドグラス上に展開させ、核を回収してPCRで増幅する方法により、これは可能となった。得られたプローブはハプテンで標識し変性させ、変性した染色体標本上に加えて相補的な染色体DNAとの分子交雑を行い、対比染色後に蛍光顕微鏡で観察した。rDNA由来のプローブにおいても、cDNA由来のプローブと同様にシグナルの弱いものがあるが、二次抗体の使用によってこれはかなり解決された。現在までにrDNA由来の8プローブが得られ、in situハイブリダイゼーションに使用した。その結果、稔性および不稔性の2系統を分ける特異的プローブは認められていないが、種の染色体構造を解明するに足るプローブ数が確保できたと考えられる。PCRによるrDNA由来のプローブ作成はcDNA由来のプローブ作成に比べて簡便でしかも能率よく得られる。したがって、現在までに得られたプローブによる染色体in situハイブリダイゼーションをすすめていくと同時に、さらにrDNA由来のプローブを作成する。
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