研究概要 |
本研究は、ファレノプシスにおけるパーティクルガンを用いた遺伝子導入法の確立および形質転換体の再生を目的として行った. まず,プロトコーム状球体(PLB)の二分割切片にgus遺伝子を導入してそのトランジェント発現を調べ,遺伝子導入条件(パーティクルガンのポンピング数15回,カリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーターおよびジェミニウィルスベクターを供試)を決定した.これにしたがって除草剤ビアラホス耐性遺伝子barをPLB切片へ導入し,1および5mg/lビアラホス添加培地での2回の選抜を行った後に得られた植物体におけるゲノムDNAの分析およびbar遺伝子産物の分析を行った結果,bar遺伝子の導入と発現が認められ,ファレノプシスで初めての形質転換の成功が確認された.また,得られた形質転換体の分割切片から新たに誘導されたPLBはいずれも導入されたbar遺伝子を保持,発現しており,形質転換体をクローン増殖できることが示された.この導入遺伝子の保持,発現は2回のクローン増殖の後にも確認された. エンブリオジェニックカルス(EC)は多くのPLBが分化するが,これに遺伝子導入を行うためにはまず植物体再生系を確立する必要がある.外植体としたPLB切片からは40g/lショ糖添加培地でECが誘導され,植物生長調節物質またはココナッツウォーター(CW)の添加,およびジェランガムの使用もまたEC誘導を促進した.これらのECはショ糖無添加培地への移植によって多数のPLBを分化した.PLBの発達には,特に200ml/lCWおよび1g/lトリプトンの培地への添加が有効であった.また,ECからの再生植物体の花の形には相似性が認められた.さらに,このECにパーティクルガンにより導入したgus遺伝子の発現が認められたことから,形質転換体の再生系としてEC培養系の利用が期待された.
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