本研究において、ブドウ果実のアントシアニン生成における波長域別の光条件が明らかとなった。まず培養果実切片の光感受性における品種間比較では、暗黒条件下のブドウ果実切片のアントシアニン蓄積は、供試したいずれの品種においても、光照射下と比べ抑制され、ブドウ果実のアントシアニン生成が光照射に強く影響を受けていることが示された。さらにブドウ果実のアントシアニン生成に対する光質の影響が明らかとなった。全体として、白色光および紫外光は単独でアントシアニン生成を促進すること、白色光と紫外光の同時照射によりさらに促進されることが示された。 次に‘グローコールマン'果実において白色光と紫外光照射の相互作用について調査したところ、紫外光の波長域間での比較においては、UV-BはUV-Aに比べより低い強度でアントシアニン生成の促進効果が現れるものとみられたが、高い強度では逆に抑制が起こることがしめされた。可視域では青色および赤色光での促進効果が、緑色および黄色光より大きく、紫外光に対する反応を合わせて考えると‘グローコールマン'果実は、青色から長波長の紫外に至る波長域および赤色域に反応スペクトルの極大を有しているものと考えられた。また光条件はアントシアニン色素の全体的な量に影響すると同時にその組成に影響を及ぼしていることが示された。 さらに糖およびABAのレベルが果皮切片のアントシアニン生成に大きく影響することが確認されたが、同時に果実切片のアントシアニン生成の光依存性に変化をもたらすことが示された。 またブドウ果実切片のアントシアニン生成とPAL活性との間に密接な関係があることが明らかとなり、アントシアニン生成における光照射の影響が、PAL活性に対する作用を介して生じていることが示唆された。
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