研究概要 |
1.キレート剤溶液中によるカンキツ生果皮磨砕抽出物の調製とその性状 (1)生果皮よりアセトン粉末(AIS)の調製:試料の均一化を目的とし、かつペクチンエステラーゼ(PE)活性をそのまま残留させるために、常法によりAISを調製した。(2)キレート剤溶液によるAISの抽出と抽出物のゲル強度:各種濃度及びpHのクエン酸及びフィチン酸を用いて、30℃, 60分間AISを振とう抽出後ろ過し、ろ液を5℃で冷蔵したところゲル形成がみられた。レオナ-等によりゲルの破断強度及び硬さを測定した結果、クエン酸及びフィチン酸による抽出物はそれぞれ0.1M及び0.03M濃度のとき、またいずれの場合もpH8付近でゲル強度は最大値を示した。(3)キレート剤溶液によるAISからのペクチン溶出量:AISからのペクチンの溶出量はクエン酸及びフィチン酸溶液の濃度それぞれ0.1M及び0.03Mのとき、また両溶液のpHが8付近のとき最大であることを認めた。 2.カンキツ生果皮のPE活性:生果皮より粗酵素液を調製し、中和滴定法によりPE活性を測定したところ、pH7〜8付近において同活性が高いことがわかった。 3.果実発育過程のカンキツ果皮のペクチン含量と果皮抽出物のゲル強度:栽培中の温州ミカン果皮のペクチン含量と生成ゲル強度は果実の肥大につれて増加した。果実発育に伴うペクチン含量及び抽出物のゲル強度との間には高い相関関係が認められた。以上の結果から、カンキツ生果皮抽出物のゲル形成には、キレート剤溶液によるペクチン溶出と可溶化したペクチンのPEによる脱メトキシル化によるペクチン酸の生成及びそれとCaなど二価イオンとの架橋結合により生起し、低温下ではこれら成分と多価有機酸とが再配列を起こして、立体構造を形成するものと推察した。ゲル化機構は次年度に追究予定である。
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