研究概要 |
ナミハダニの色彩二型間における生殖不和合性と色彩決定に関与する遺伝的要因を解明するため、4系列の交配を5世代まで行った。その結果、次のことが分かった。 1.黄緑型(G)と赤色型(R)の交配では、同型内交配に比べて幼虫から成虫までのふ化率と雌率が低下した。また、G♀×R♂では、15%のペアが和合した(ふ化率72.4%、雌率62.1%以上)一方、R♀×G♂ではすべて不和合であり、弱い一方向不和合性が認められた。出現したF1個体の雌は、すべて赤色であったが、その内の約30〜60%は産卵せずに休眠雌のような鮮赤色に変化した。これらの個体は赤色から変化したので、赤色は緑色に対して優性であると考えられた。 2.F2世代では、産卵数、ふ化率、雌率が極端に減少し、和合する個体も出現しなかった。体色は、赤色を優性にした場合に予測される理論値と実測値が良く一致した。つまり、(R×G)×Rと(G×R)×Rでは、赤色個体が100%、(R×G)×Gと(G×R)×Gが共に50%であった。したがって、2世代目までの色彩の遺伝様式はメンデル遺伝によって説明できた。 3.ポリアクリルアミドゲル電気泳動による遺伝子分析では、EST、PGI、MDHによって二型を識別でき、かつ子孫の分析によって両親を推定することがある程度可能であることが分かった。 4.赤色型は休眠しないという特徴をもつが、本研究で各地の個体群を調査するうち、従来1度だけ報告のある休眠性赤色型を発見した。この個体群を詳細に検討した結果、ナミハダニに極めて近縁な新種であることが分かったので、記載した(Ehara and Gotoh,1996)。
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