研究概要 |
本年度の主要成果は以下の通りである。 1.Fusarium solaniの体細胞染色体を対象とする染色体ペインティング技術の確立 PCR法(DOP-PCRとprimer-ligation PCR)を導入することにより,微量のDNAからペインティング用に大量のDNAを増幅・ラベルしてプローブを作製することに成功した。さらに,特定染色体について,この手法で作製したプローブを用いたFISHを行い,実際にペインティングが可能であることを実証した。この技術確立により,F.solaniを含めPFGEで分離される糸状菌の全染色体についてのペインティングが基本的に可能となり,転座や欠失を細胞遺伝学的に解析する道が開けた。 2.染色体ペインティングによる特定染色体の細胞遺伝学的同定 上記1で確立した染色体ペインティング法及び,in situ suppression hybridization法をF.solaniに適用し,DS染色体の細胞遺伝学的検出や多色FISHによる複数染色体の同時検出に成功した。 F.solani,Alternaria alternata,Botrytis Cinereの核型に関する多型解析 (1)F.solani:異なるforma specialis間でのゲノムの染色体構成の相違をゲノムペインティング法で比較し,f.sp.pisi,f.sp.robiniae,f.sp.xanthoxyliにそれぞれゲノム特有の染色体が存在することを示唆する結果を得た。 (2)A.alternata:habitatを異にする複数の菌株を対象にrDNAをプローブとしてFISHを行い,rDNAの数とサイズに多型が存在することを細胞学遺伝学的に実証した。 (3)B.cinere:倍数性の異なる菌株(n,2n,3n)について細胞遺伝学的核型解析を行い,中期染色体数は核相に関わらず同一であるといる新規現象を示唆する結果を得た。
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