研究概要 |
1. 土壌伝染性植物病原糸状菌Rhizoctonia solaniの菌糸融合群,AG-1サブグループについて、17SリボソームDNA遺伝子の多型性による類別を試みた。同グループに属する12菌株についてPCR法により染色体DNAから増幅した17SリボソームDNA断片の長さはいずれも約2.0kbであった。これらの増幅産物を5種類の制限酵素(EcoRI, HaeIII, HinfI, MspI, TaqI)による消化断片として多型性を調べた結果,同一グループ内の菌株間では類似した切断パターンが示された。一方,異なるグループに属する菌株間では切断パターンが異なることが判明した。これらの結果から,分子生物学的手法に基づく本菌のサブグループ間の類別が可能であることが示唆された。 2.菌体脂肪酸分析と28S rDNAの制限酵素解析の結果に基づき,イネに紋枯病および凝似紋枯症状を引き起こすRizoctonia solani AG-1, R. oryzae, Sclerotium oryzae-sativa, S. fumigatumおよびS. hydrophilumについて系統分類学的位置関係を検討した。菌体脂肪酸分析では,同定した9種類の脂肪酸のうち,特にパルミチン酸,オレイン酸およびリノール酸の組成比がすべての種に共通して高いことが判明した。また,R. solani AG-1およびR. solani AG-2-2, S. oryzae-sativaおよびS. fumigatumの2グループ間には,脂肪酸組成比に関して明確な違いが認められた。一方,28S rDNAを5種類の制限酵素を用いて解析した結果,R. ortzae-sativaは明らかに他の種とは異なる切断パターンを示した。また,R. oryzae-sativaとS. hydrophilumの切断パターンは,Hhalを除く4種類の制限酵素を用いた場合によく一致した。
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