研究概要 |
植物ウイルスの翻訳後修飾(post-translational modification)を明らかにし、細胞内でのウイルスの移行について検討にすることを目的とした。動物ウイルスのpicornavirusと同様にpotyvirusのポリタンパク質はprocessingより機能を持つタンパク質になる。Potyvirusのタンパク質の機能は最近になって明らかになりつつあるが、どのような過程を経てprocessingされるかは未だ明らかでない。そこで、申請者はpotyvirusのcleavage eventの過程について検討した。 (1)植物体内においてウイルスタンパクの翻訳後修飾を追跡するためにはまずそれらの抗血清が必要である。そこで、potyvirusであるカブモザイクウイルス(TuMV)を用いて構造タンパク質である外被タンパク質(CP)、非構造タンパク質である細胞質封入体タンパク質(CI)、アブラムシ伝搬性に関与するタンパク質(HC-Pro)およびP1タンパク質に対する抗体を作製した。CPおよびCIについては容易に、TuMV感染葉から精製できたためそれらをウサギに注射し抗血清を作製した。一方、HC-ProおよびP1についてはそれらのタンパク質を遺伝子工学的手法により大腸菌で産生させ、それらのタンパク質に対する抗血清を作製した。 (2)当初TuMV感染葉から核内封入体タンパク質(NIa,NIb)の精製を試みたが困難であったため、それらの遺伝子をクローニングし大腸菌で産生させた。NIaタンパク質は大腸菌での発現に成功し抗体を作製した。NIbタンパク質は大腸菌での産生に成功し抗体を作製中である。また、6K_1および6K_2タンパク質については大腸菌での発現に成功し抗体を作製中であり、P3タンパク質およびVPgタンパク質についてはそれらの遺伝子をクローニング中である。 (3)HC-Proタンパク質およびCPについては既にTuMV感染植物を経時的に調製し、Western blotting法で検出した結果、HC-Proタンパク質はCPに遅れて検出され、またCPは徐々に蓄積されるのに対して、HC-Proタンパク質は一度増えた後に減少することが明らかとなった。即ち、HC-Proタンパク質はCPに比べて不安定であり、植物体内でより速く分解されていることが明らかとなった。以上の結果は、既に論文として投稿中である。 (4)P1およびNIaについてそれらの抗血清を用いて検討した結果、TuMV感染葉からそれらのタンパク質を検出できた。今現在それぞれのタンパク質の細胞内における所在について検討中である。 (5)また今後の研究の方向としてTuMV RNAの感染性cDNAが必要であるので、今現在作製中である。
|