Getorichum candidum citrus raceはカンキツの白かび病菌として良く知られているが、日本ではあまり研究されていない。これまで得られた結果を記述する。わが国のカンキツ栽培10県のカンキツ園と非カンキツ圃場およびカンキツ非栽培地帯の北海道の圃場(合計33種の作物栽培圃場と未耕作地)より土壌446点を集め、選択培地を用いてG.candidumを分離した。各分離株のレモン、オレンジ、温州ミカンに対する病原性を調べた。その結果、カンキツ園土壌236試料のうちの226試料からカンキツに病原性のあるG.candidum citrus raceが分離され、1試料から非病原性のG.candidumが分離された。一方、非カンキツ圃場の土壌210試料のうち130試料からG.candidum citrus raceが、10試料からG.candidumが分離された。非カンキツ圃場の主要栽培作物はイネ、野菜、果樹等の栽培土壌のほか森林等の未耕作土壌も含まれ、G.candidum citrus raceが日本各地のカンキツ栽培地帯以外にも広く分布していることが確かめられた。分離株のレモンに対する病徴の激しさで分類すると5種の病原型に分けられた。代表種7菌株を10種のカンキツと16種の果実、果菜類に接種し、病原性を比較した。その結果、6菌株はレモン、スウィートオレンジ、ウンシュウミカン、イヨカン、ポンカン、タンカン、ポメロ、グレープフルーツ、サワ-オレンジ、キンカンのほか、ニンジン、トウガラシ、トマト、カキ、メトンに病原性を示し、1菌株はリンゴにも病原性を示した。また、asparagine-glucose培地を用いて、pyridoxineの要求性を調べ、病原性のある358株のうち、260株が必要とし、98株が不要であり、非病原性の11株のうちトマト圃場から分離した株のみが要求することを確かめた。
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