平成7年度の研究においては、使用するフザリウム菌として、トマト萎ちょう病菌、ホウレンソウ萎ちょう病菌、メロンつる割病菌およびイチゴ萎黄菌をとりあげ、これら病原菌の遺伝子導入法を検討し、標識遺伝子による形質転換体を育成した。まず、遺伝子の導入法については、マイクロインジェクション法、エレクトロポーレーション法およびパーテイクルガン法の3法を検討したが、エレクトロポーレション法によって、もっとも簡便かつ効率的に遺伝子導入体が得られた。導入する標識遺伝子としては、ハイグロマイシンの無毒化遺伝子、β-グルクロニダーゼ(GUS)生産遺伝子およびルシフェラーゼ生産遺伝子を用いた。これらの結果については、平成7年度の日本植物病理学会大会ならびに関西部会において発表した。このように、初年度の研究においては、当初の研究目標がすべて達成され、一部次年度の研究を開始した。以上の研究に加えて、インドールのある種の類縁化合物がフザリウム菌の伸長を効果的に抑制することをみつけ、さらに、イチゴ萎黄病、トマト萎ちょう病菌、ホウレンソウ萎ちょう病、メロンつる割病菌などのフザリウム菌がそれらの化合物に対して感受性の異なることを明らかにした。すなわち、このような薬剤に対する感受性の差異を利用すれば、本研究の主要テーマである『遺伝子標識法による菌類モニタリングシステム』を効率的に補完することが可能であった。これらの結果については、平成7年度の日本植物病理学会関西部会で報告した。また、インドール類縁化合物のうち、5-フロロインドールが病原菌の細胞壁合成を抑制して、菌糸伸長や胞子形成を抑制することも明らかにできたので、この結果については、同じく、平成7年度の日本植物病理学会関西部会で報告するとともに、英文原著論文にまとめ、日本植物病理学会報に投稿した。
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