研究概要 |
Pseudomonas属菌のいくつかはきのこの子実体に病気を起こす原因菌として知られている。一方,シイタケを含む木材腐朽菌がこれらの細菌を溶解することが報告されており,これは木材に不足しがちな窒素源の1補給法と考えられている。この細菌溶解能はシイタケの菌株によって異なることから,その遺伝性について検討した。その結果,高溶解能を示した菌株に由来する担子胞子の発芽率は高く,その一核菌糸体の生育も良好であった。さらにこれら一核菌糸より構成された二核菌糸体の大半が比較的高い細菌溶解能を示した。これに対し,試験に用いた弱溶解能を示す2菌株は,ともに劣性の致死因子を保有しており,これらに由来する一核糸体の大半が異常な生育を示した。また,これらにより構成された二核菌糸体の細菌溶解能は弱いものから強いものまで様々であった。 上記実験と並行して、日本の栽培きのこに生じた病原細菌の同定を、16SリボゾームDNAの塩基配列およびRFLPの相同性解析により行った。その結果、Pseudomonas tolassii 7菌株、P.fluorescens 1菌株が同定できた。P.tolaasiiのうち,ヒラタケより分離された2菌株は同じREP-PCR banding pattern有し、エノキタケおよびツクリタケより分離された菌株とよく類似していた。シイタケより分離された3菌株のREP-PCR banding patternは多様性を示した。また、きのこの軟腐病菌Pseudomonas gladiori pv.agaricicolaの接種試験を日本の主要な栽培きのこを用いて行った。本菌は広い宿主範囲を有し、キチナーゼを産生する。また,きのこ菌種との対峙培養において,いくつかのきのこ菌種の菌糸伸長が強く抑制されることから,何らかの抗菌性毒素を産生するものと考えられた。
|