1.BmNPVをBmN4細胞を用いて34代及び35代連続無希釈継代した。この2つの継代系列から、欠失ゲノムを持つウイルス株(Serial Passaged Mutant(SP mutant))を15株分離した。 2.SP mutantは、ゲノムの共通した領域に欠失を持っているものが多く発見された。その領域はほぼ5ヶ所に限定できることが、ゲノムDNAの制限酵素解析とアガロースゲル電気泳動より判明した。 3.SP mutantのうちHIndIII-Lに欠失をもつものは、すべてBmN4細胞の感染像がアポトーシス様を示した。このことは、in vitroでのウイルスの弱毒化がこのゲノム領域に関与していると考えられた。 4.カイコ幼虫にBmNPVを感染させ、体液から分離したウイルス評品の中には、SP mutantが含まれていることが判明した。ゲノム中の欠失領域は、BmN4細胞における連続無希釈継代液由来のものと類似していた。 5.In vitroで分離したSP mutantをカイコ幼虫へ感染させたところ、HindIII-L断片の一部を欠失しているものは、ウイルスの増殖が鈍く回収ウイルス量も低いことが判明した。また、HindIII-H断片の一部を欠失しているものは、感染カイコ幼虫の皮膚が野生株ウイルス感染カイコ幼虫のようにmeltingを起こさなかった。そのため、死亡個体はミイラ化した。この結果と、バキュロウイルス遺伝子のデータベースから、HindIII-H領域にある欠失は主にウイルス由来キチナーゼ遺伝子それであることが推察された。
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