植物の系統樹に基づいた分類に従い、様々な科の代表的な種を選択してその乾物生産、養分(特に窒素)の吸収について調査を行った。植物個体はタイ熱帯林で採取した木本および草本、北海道大学植物園において採取した草本、北海道大学農学部圃場において栽培試験を行った木本および草本、森林総合研究所北海道支所内林地において採取した木本を用いた。窒素の含有率を植物体全体および葉、枝、幹、根、さらに幹に関しては基部より10から20個に分けて決定した。また、乾物生産能を評価する一つの手法として、飽和光を照射して定常状態に達した最大展開葉のガス交換能を携帯型光合成測定器を用いて測定した。 吸収窒素量当たりの乾物集積量または窒素含有率当たりの乾物生産速度を窒素の利用効率として各種植物種の比較を行ったところ、木本の中ではマメ科、マツ科などで利用効率が低い一方、カバノキ科、ヤナギ科では高く、その他の種ではその中間に位置する結果が得られた。また、草本では窒素利用効率は木本より低く、特にマメ科で顕著に低かった。この窒素利用効率は葉の窒素含有率と負の相関関係を示しており、植物種による窒素の利用の仕方に大きな違いがあることが推定された。光合成能は一つの種内ではほぼ葉の窒素含有率と正に相関するが、異なる種間では必ずしも同じ直線上には乗らず、葉厚などの葉の構造的な特徴が密接に関与していると推定された。また草本、特に作物の最大光合成能と樹木の最大光合成能には極めて大きな違いが存在しており、この違いは一枚の葉の寿命が重要な役割を果たしているとの予備的な知見が得られた。 平成8年度は上記の植物に対する生育時期や生育環境の及ぼす影響、また炭素と窒素の相互作用に及ぼす他の無機養分の影響を明らかにすることを目的とする。
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