植物の乾物生産、ガス交換能は体内の窒素含有率などの静的な要因のみでは、ある生育ステージに関して説明が可能であっても生育全般を解析する場合には困難があることが多い。そこで、物質の移動速度といった動的な要因によっても強く支配されている可能性を明らかにすることを目的として以下の実験を行った。11種類の作物および樹木を供試し、最大展開葉に^<14>CO_2または^<35>S-メチニオンを同化し、炭素と窒素の移行速度を推定した。同時に生育に伴う窒素含有率、光合成能の変遷を測定し、炭素と窒素の移行速度との関連性を調査した。1.^<14>Cで評価した炭素の移行速度(^4C移行速度)と^<35>Sで評価した窒素の移行速度(^<35>S移行速度)は正の相関を示したことから、炭素と窒素の転流は相互に関連しているものと推定された。2.葉の窒素含有率はいずれの植物でも出葉期に高く(45-65mgg^<-1>)その後急速に低下した。マメ科の窒素含有率は作物、樹木いずれでも他の植物種に比較して高く推移した。また一枚の葉の寿命は樹木で作物よりも長かった。窒素含有率の変化率から葉からのみかけの窒素の流出速度(Ni)を算出した。Niは作物、特にトウモロコシで高く、樹木で低かった。Niと^<35>Sの移行速度は正の相関を示した。3.光合成能と14C移行速度との間には正の相関が認められたことから、光合成能と葉からのみかけの炭素流出の間には密接な相互関係が存在すると推定された。そこで単位窒素あたりの光合成能から葉からのみかけの炭素流出速度(Cl)を算出した。4.供試した植物全体ではNiが高まるとClは指数関数的に高まり、両者の間には密接な関係があることが示された。このことは光合成能が窒素含有率のみではなく、窒素の移行速度によっても制御されることを示している。
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