研究概要 |
パンコムギ(Triticum aestivum L.ゲノムABD)を中心材料として,その起源種とされる一粒系コムギ(Triticum mono coccum L.ゲノムA)と二粒系コムギ(Triticum dicoccum L.ゲノムAB)およびエギロプス属のタルホコムギ(Aegilops squarrosa L. ゲノムD)についてそれぞれを異なる窒素栄養条件で栽培しその最上位完全展開葉を実験材料とした。Rubisco活性と量,およびカーボニックアンヒドラーゼ活性を調べそれらの窒素栄養に対する応答について調べた。さらに,それらの変化と光合成との関係を定量的に解析し,ゲノム間との相関について考察を加えた. Rubisco活性はパンコムギと二粒系コムギにおいて高く,一粒系コムギとタルホコムギにおいて低かった。.このことはEvansとAustin(1986,planta 167,344)の報告と一致した。しかし,Rubisco含量とカーボニックアンヒドラーゼ活性に種間差は認められず,またそれらには窒素栄養に対する応答にも種間差は見い出せなかった。 Rubisco活性に大きな種間差があったにもかかわらず低CO_2分圧下(葉内CO_2分圧にして20Pa)の光合成には差が認められなかった。そこで,RuBP再生産系の能力の種間差について検討した。CO_2飽和の光合成速度やSPS活性等について調べたがそれらについても有意な種間差は見い出せず,現在の段階ではRubiscoの活性差がなぜ光合成に反映しなかったのか不明のままとなっている。 今後は,光飽和の条件でのRubiscoの生体内における活性化状態等の差について検討をする必要がある。
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