研究概要 |
ダイズ根粒菌超反復配列保有株(HRS株)は、(1)RSαとRSβのコピー数が通常株よりはるかに多いこと、(2)nif/hupなどの共生遺伝子周辺でハイブリダイゼーションバンドの移動や重複が観察されること、(3)根粒形成・窒素固定・ヒドロゲナーゼ活性などの共生に関わる表現型は変化ないが、培地中での生育は通常株と比較して極めて遅いこと、(4)血清型は、HRS株・通常株にかかわらず、各圃場に特有のパターンを示すことより、HRS株は土着の通常株から挿入配列(IS)の介在するゲノム再編成によって圃場生態系の中で生じたのではないかと考えられ、その検討を行った。 スナップバック分析により,HRS株から逆方向反復配列の検出と単離を行ったところ新たに6種類の挿入配列(IS)が超反復配列保有株から単離された。スナップバック分析の結果自体、これらの挿入配列はいずれも逆方向状態で存在しており、ゲノム再編成の結果生じたものと考えられるだけでなく、このような構造そのものが複合トランスポゾンの構造をしているのでさらなるゲノム再編成や遺伝子の水平伝達を引き起こす可能性が考えられた。実際、新潟タイプのHRS株NK6における共生遺伝子nif/hup/nod遺伝子周辺のマッピングを行ったところ、共生遺伝子周辺では、ISの挿入、欠失、遺伝子重複などの激しいゲノム再編成の痕跡が観察された。さらに、nif領域が逆方向状態のRSαで挟まれた複合トランスポゾンの構造が実際に存在することが明らかとなった。 根粒形成遺伝子を欠失した別種のダイス根粒菌Bradyrhizobium elkanii USDA94ΔNODをHRS株と混合して、低温条件下で1週間放置したところ、根粒形成能を回復したB.elkanii受容菌が単離された。この株は、HRS株NK5からの根粒形成遺伝子の伝達と挿入配列FK1の増加が観察され、HRS株の遺伝子水平伝達のポテンシャルが示された。
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