水田はアジアを中心に約1億5千万ヘクタール広がる重要な食料生産基盤であり、湛水により嫌気的環境が支配的なため、メタン生成菌など絶対嫌気性菌が多いと言われている。メタン生成菌は強力な地球温暖化ガスであるメタンを生成する。しかし、水田土壌中のこうした嫌気性菌の生態や微生物相などの知見は極めて限られており、地球環境保全のための嫌気性菌の制御は現状では困難である。 そこで本研究では、PCR法や基質利用性による同定法を湛水土壌に適用し、嫌気性細菌の検出と微生物相の解析とその活性評価を行う。これと平行してメタン生成菌の分布様式や他の微生物群との競合関係の解析、その変動要因などを明らかにする。2年間に以下の項目について検討した。 1)メタン菌に特有な16SrRNA塩基配列を用いたPCR法で、水田土壌中のメタン生成菌相を探った。2)メタン生成活性とメタン菌数の関係を3種類の水田土壌を用いたポット実験で検討した。 3)蛍光顕微鏡を併用し湛水土壌中でのメタン生成菌の生残機構の解明と生息部位の特定を行なった。ロールチューブ法による一般の嫌気性細菌のうちコエンザイムMによる蛍光を発する菌数は1割以下であった。 4)水田土壌中のメタン生成活性と基質の関係を、有機物連用を行った水田マイクロコズム実験で検討した。 5)メタン生成菌と競合する他の嫌気性細菌の基質としても重要な酢酸の代謝速度から、メタン生成活性と呼吸活性とを評価し、湛水初期と中後期で基質利用性が大きく異なることが明らかとなった。 6)分離したメタン生成菌の同定を行うため、形態観察と基質利用性による同定法を検討した。
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