研究概要 |
植物は外界からの刺激に反応し、その情報を他の部位に伝えるが、このような各器官間の情報の長距離輸送は主として篩管を通じて行われると考えられている。篩管は情報の長距離輸送の場として重要であるが、その場合形態学的に篩部要素.伴細胞複合体は他の細胞とは原形質連絡がないことを考慮する必要がある。このことのため、植物においても、感知された情報が篩管内に到達するためには、細胞膜を介した情報のやりとりが起こっており,細胞膜を介した情報の伝達には、Caイオンやプロテインキナーゼが関与していることが考えられた。本研究の目的は,篩管内に存在するCa依存性プロテインキナーゼの遺伝子を単離し、その発現調節機構を明らかにすること、および得られた遺伝子(cDNA)を篩部特異的プロモーターにつないだキメラ遺伝子を用い形質転換植物を作成し、植物の光応答性の変化を調べることである。 CDPK遺伝子の単離はPCRを用いる方法で行う。既にイネで発現するCa依存性プロテインキナーゼ遺伝子がクローニングされており,得られた遺伝子配列より相同性の高い領域が見いだされている。この部分をもとにプライマーを合成し、PCR反応により遺伝子断片の単離を行った。得られたcDNAを篩部特異的プロモーターの下流に挿入したイネ形質転換用ベクターを作成し、アロクバクテリウムを通じてイネにに導入する系を確立した。篩管ないには少なくとも3種類のCDPKが存在すると考えているが、新たなCDPKを単離するために、RACE法によるイネの新たなCDPK遺伝子の単離を、イネ維管束より調整したmRNAを鋳型にして、行った。現在、別のものとおもわれるCDPK遺伝子の3′末端が得られおり、5′末端のクローニングを急いでいる。
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