研究概要 |
酵母Saccharomyces cerevisiaeを、亜鉛レベルを変えたBurkholder最少培地で1代培養した。菌体を集めガラスビーズとともに激しく震とうすることによって破砕し、タンパクを抽出したのち変性条件で電気泳動を行い、ペプチドレベルで亜鉛欠乏の影響を検討した。その結果超高感度なペプチド検出法である銀染色で多数のペプチドの消失または新たな出現が認められた。これよりやや感度の低いCBB染色でも幾つかのペプチドに差のあることが認められたため、本ペプチドのN末端アミノ酸配列を検討し、ペプチドを同定する事より、亜鉛欠乏によって影響を受けるペプチドの機能から亜鉛の生理機能を推定した。4個のペプチドを解析対象としたが、うち1個のペプチドのN末端アミノ酸配列21残基が決定され、Cu,Zn-Superoxide dismutase(Cu,Zn-SOD)のN末端アミノ酸配列と100%の相同性を示したため、このものがCu,Zn-SODであると同定した。残り4個はN末端がブロックを受けているらしく、N末端アミノ酸は解読できなかった。SODは活性酸素の消去に必須の酵素であるため、亜鉛欠乏症の一部が本酵素の減少に起因する酸素障害である可能性が高いものと考えられた。今後残りのペプチドについてもブロックをはずす等して、アミノ酸配列を解読する必要がある。 亜鉛欠乏によって細胞周期に何らかの差異の生じることが考えられたため、亜鉛欠乏下における細胞の生育経過を濁度の測定により検討し、かつ生育途中で亜鉛を再添加して細胞の生育を調べた。その結果、亜鉛欠乏が進行すると亜鉛を再添加してもすぐには生育が回復しないことが認められ、亜鉛は細胞周期上の複数の箇所に関与している事が推定された。この中で第1義的な影響が何であるのかさらに検討する必要がある。また核の変異が比較的早い時期から認められた。
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