水稲を、亜鉛レベルを変えた水耕液で栽培し、亜鉛欠如区に亜鉛欠乏症の一つである伸長の抑制が認められ始めた段階で、植物の一部を遮光した。10日間培養の後地上部を採取し、葉鞘を一枚ずつ丁寧にはがし分裂組織を集め、タンパク抽出用緩衝液と海砂を加えて乳鉢で破砕し、タンパクを抽出したのち変性条件下で電気泳動を行い、ペプチドレベルで亜鉛欠乏の影響を検討した。その結果 1)亜鉛欠如処理区でタンパク含量の著しい低下ならびにその低下の遮光による緩和が認められた。 2)亜鉛欠如処理区で遊離アミノ酸の著しい増加ならびにその増加の遮光による緩和が認められた。 3) 亜鉛欠如処理区で過酸化物量の増大が認められた。 4)亜鉛欠如処理区でスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性の低下が認められた。 5)CBB染色で幾つかのペプチドに差のあることが認められたため、本ペプチドのN末端アミノ酸配列を検討し、ペプチドを同定する事より、亜鉛欠乏によって影響を受けるペプチドの機能から亜鉛の生理機能を推定しようとした。3個のペプチドを解析対象としたが、いずれもN末端がブロックを受けているらしく、N末端アミノ酸は解読できなかった。今後、ブロックをはずす等して、アミノ酸配列を解読する必要がある。以上の結果、亜鉛欠乏によって引き起こされる症状の内幾つかは、SOD活性の低下にもとずく光酸化の害によるものと考えられ、今後この観点からもタンパク質生合成を検討する必要がある。
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