チャ樹(Camellia sinensis)のカフェイン代謝研究の過程において、未熟果実の果皮および種子に大量出現する未同定のニンヒドリン陽性物質を見出した。前年度は、この物質について、二次元薄層クロマトグラフィー(TLC)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による同定の結果、ピペコリン酸であることを明らかにした。今年度は、ピペコリン酸のチャ樹の果実における消長のほか、花芽や新芽等における消長も調べ、生理的役割について検討した。 1、チャ樹の果実生育(種子形成)等に伴うピペコリン酸の消長と生理的役割 (1)前年度と同様、ピペコリン酸は6月中旬から9月上旬の未熟果実(特に種子)に大量に見出され(総遊離アミノ酸の約70〜80%)、完熟種子(子葉)ではほぼ消失することを確認した。この結果、ピペコリン酸は種子形成(子葉肥大)に重要な役割を果たすと考えれた。 (2)ピペコリン酸は花芽(特に雄ずい)でも含有率が高かったが、プロリン含有率はチャの花では低かった。しかしながら、花芽形成の誘導との関連は明白ではなかった。 (3)ピペコリン酸は新芽や若葉、または上級茶(玉露、碾茶、煎茶)にも見出され(10〜15%)、茶葉品質との関連が示唆された。
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