研究概要 |
[目的]ダイズ種子のタンパク質の脂質の含量は品種や栽培環境により変動するが、どの様な機構によるか不明である。そこで、開花期に窒素肥料を与え、種子の成分含量への影響を調べた。[方法]2品種のダイズ(高蛋白品種:エンレイ“EN"、高脂質品種:タマホマレ“TM")を95年6月1日に播種し6月中旬に圃場に1株当たり2個体(株間隔20cm、1処理区5x1m、2連)を定植した。開花が始まってからしばらくの8月1日に1株当たり10gの硫安を株元にまいた(窒素施肥区、HN)。開花開始から60日頃から10日間隔で登熟途中の種子を3回採取し、凍結保存した。完熟種子は植物体が枯れた後に回収した。登熟途中と完熟した種子を重量の違いにより分離し、各々のタンパク質含量,脂質含量、アミノ酸と糖組成を調べた。[結果]両品種ともに窒素追肥の有無による種子の生長は、僅かに無施肥の方が速かった。タンパク質含量はENでは無追肥区(LN)で42〜44%、NHで40〜42%、TMではLNで36.5〜37.5%、HNで34〜36.5%で、種子重がENで0.23g,TMで0.24gで最も低くなった。また、脂質含量は全く逆になり、ENではLNで13〜14.5%、HNで14.5〜16%、TMでそれぞれ15.5〜16%、16〜16.5%になった。登熟途中の変化を調べると、脂質は登熟初期での蓄積が速く、窒素施肥により増量した。一方、タンパク質はLNの方が速く蓄積した。遊離アミノ酸組成では、転流形態の主要なアミノ酸のグルタミン含量がHNで極端に少なくなった。これらのことから、窒素施肥により茎葉部の生育が盛んになり光合成が盛んになったことに依る糖の種子への転流量が増加する一方で、アミノ酸の転流が抑制され、その結果として、種子の成分含量に影響が出たと考えられた。
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