研究概要 |
Rj遺伝子保有ダイズ品種CNS(Rj_2Rj_3),Hill(Rj_4)とダイズ根粒菌菌株Is-1(CNSに非親和性,Hillに親和性),Is-34(CNSに親和性,Hillに非親和性)を用いて,Rj遺伝子保有ダイズ品種の根粒菌株選択性と根中のイソフラボノイド類との関連性を明らかにするために研究を進めた. CNSとHillにIs-1あるいはIs-34を接種後3,5,7,10,14,28日間栽培し,根粒形成数と根中のグリセオリンIとタイゼインの含量を調査した.接種菌株に関係なくグリセオリンIは10日目までタイゼインは7日目まで,低含量で推移し後半に増加した.ダイズの主根上の皮層細胞分裂を徒手切片を用いて,宿主根への根粒菌の進入を蛍光標識抗体を用いて調査した.親和性菌株接種根では5日目に一次分裂組織内に根粒菌の進入が確認できたが,非親和性菌株接種根では根粒器官の発達が遅れ,少なくとも14日目までは根粒菌の進入が確認できなかった.よって,Rj遺伝子保有ダイズ品種による非親和性菌株の根粒形成抑制は,根中のイソフラボノイド類の含量と関連なく,播種・接種後3〜5日目に根粒菌の進入段階で生じていると推定した.CNSとHillの3,5日間栽培の根抽出物についてイソフラボノイド類の含量,ならびに根抽出物等の根粒菌の^<14>C-酢酸代謝への影響について調査した.nod遺伝子の発現を誘導するジェニスタインとタイゼインの含量に品種間差は認められなかった.根粒菌の^<14>C-酢酸の代謝産物のHPTLC分離パターンにジェニスタイン,ダイゼイン,ダイズ根抽出物の添加の差は認められなかったが,Is-1とIs-34の両菌株間で検出されるスポットの数および強度は異なっていた. 以上の結果から,植物根から分泌される物質が根粒菌株の産生する分子シグナル組成を変化させるのではなく,宿主が根粒菌株間で異なる分子シグナル組成を認識し,根粒菌の進入を決定することで,Rj遺伝子保有ダイズ品種による根粒菌株の選択が行われると推定した
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