研究概要 |
本研究は細胞融合反応におけるF,HN蛋白質の役割、FとHN分子の生合成過程における相互作用(認識)と細胞膜表面での会合体形成の確認、最終的にFとHN分子がどの様にして細胞膜と相互作用して融合反応を誘起するか等、分子レベルでの多くの未解決の問題を解明することを目的とする。F分子の細胞融合やHN分子との相互作用に関与する領域を同定するため、F1とF2とのS-S結合部位、糖鎖付加部位、膜貫通領域、ロイシンジッパー領域、F1のN末端の膜融合ドメインへ変異、欠失を導入し細胞融合の発現について解析する。一方HN分子に関しても、Fと相互作用する部位の同定を行うと共に、糖鎖付加部位、膜貫通領域、ロイシンジッパー領域へ変異を導入し、これまで不明だったHN分子特性を明らかにする。 今回F蛋白質のS-S結合の機能を明らかにする目的で開裂の結果生ずるF1及びF2サブユニットのCysをSerに変換したシステイン変異F遺伝子(F_1C→S,F_2C→S)を作成し、COS細胞の発現系を用いて、発現と細胞融合活性を解析した。いずれのシステイン変異F蛋白質も、プロセシング酵素によるF_0→F_1+F_2の開裂を受けず、細胞表面への発現も抑制されており、HNとの共発現による細胞融合は検出されなかった。両変異F蛋白質はアグレゲートの形成が認めれ、おそらくミスフォルディングによりER内に留まっていると推定される。Fタンパク質分子のプロセシング酵素による開裂反応は正しい位置でのS-S結合形成の後に始めておきると推定された。 F及びHN蛋白質の細胞内輸送機構を明らかにする目的でERの分子シャペロンの1つであるBip及びcalnexin抗体を用いた解析から、HNはBip及びcalnexinと共沈降するのに対し、Fはcalnexinと選択的に共沈降することが明らかになった。また、calnexinとの結合時間は両タンパク質で異なりHNはチェイス20〜30分、Fは約5〜10分で半減した。さらに、castanospermineで処理すると、HNとBipの結合は阻害されるのに対し、FはBipと共沈降し、Fは合成直後calnexinと相互作用する前にBipと結合していることが示された。ER内での両タンパク質の輸送機構が異なることを示唆している。
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