研究概要 |
真正細菌SRP Rは、グラム陰性細菌と陽性細菌では大きく異なり、陰性細菌では100残基程度で2次構造は哺乳類のドメインIV領域に相当する部分のみからなる。これに対して、枯草菌やウェルシュ菌では、ドメインIVに加えて、度メインIやIIに相当する構造を持っていた。本研究においても枯草菌や大腸菌でのSRP RNA条件欠損株を作成したところ、いずれも強い増殖阻害がみられたことから、増殖に必須な遺伝子であることがわかった。さらに、SRP RNA中、特にドメインIV領域が機能上重要であることが判明した。真正細菌におけるSRP RNAの機能をさらに詳細に検討するため、放射ラベルした大腸菌SRP RNA(4.5S RNA)を用いてゲルシフト解析を行ったところ、大きさの異なる2種類のタンパク質を同定した。解析の結果、48kDaのタンパク質はすでに結合性が示されていた大腸菌Ffhタンパク質(SRP54の相同タンパク質)であった。約80kDaのタンパク質について、DEAE-S-ephadex A-50,Sephadex G-100を用いて精製を行い、アミノ末端のアミノ酸配列を決定したところ、タンパク質伸長因子EF-Gであった。また、GDPの添加により、最大約2倍、結合性が上昇した。一方、真正細菌SRP RNAのドメインIV中に高く保存されている22残基についてDNAデーターベースを用いて解析したところ、22残基中連続した10残基の配列が23SリボソームRNA中の配列と一致した。23SrRNA上のこの10残基は、蛋白質伸長因子EF-Gのリボソームとの結合領域に含まれていた。 以上の結果より、真正細菌SRP RNAは、蛋白質の膜透過に関与する一方、蛋白質の合成それ自身にも機能を持つ多機能分子であることが明らかとなった。さらに、この機能発現のために、SRP RNAは異なる2種類の蛋白質に対して結合能を有することがわかった。
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