研究概要 |
平成7年度では,イネ登熟種子に含まれる澱粉合成関連酵素をコードするcCNAの大腸菌での発現系の確立とその諸性質の検討,およびイネ種子胚乳変異株の澱粉合成関連酵素への影響とその生成澱粉の構造と物性について研究を行った。イネ枝つけ酵素アイソザイムRBE1とRBE3については,大腸菌での発現系とそれらの組換え型酵素の精製法を確立することに成功し,400ミリリッターの培養液から10ミリグラム程度の精製タンパク質を得ることができた。その組換え型酵素の性質を調べると,RBE1とRBE3では基質であるアミロースとアミロペクチンへの反応性が相当に異なることが判明した。また,RBE1についてそのcDNAをアミノ末端とカルボキシル末端から部分的に削除した欠失変異酵素を作製したところ,カルボキシル末端から約50アミノ酸残基だけ削除したものだけに酵素活性が見いだされた。RBE1分子内に存在する9個のシステイン残基のうち7個について塩基置換を行い,システインをセリンに変換させたような変異タンパク質を作製し,スルフヒドリル基として酵素活性に重要な役割を果たしている3個のシステイン残基を同定することができた。さらに,イネ登熟種子中に含まれる枝をつけ酵素アイソザイムRBE4のcDNAクローニングを行い,その一次構造を推定することができた。この新規枝つけ酵素アイソザイムについても,大腸菌での発現系の確立をめざしている。一方,イネ種子胚乳変異株スクリーニングを行い,floury2変異株ではRBE1遺伝子の発現が著しく減少していること,また,amylose-extender変異株ではRBE3遺伝子の発現が欠失していることが明らかになった。
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