研究概要 |
イネ登熱種子中に含まれる枝つけ酵素のアイソザイム(RBE1、RBE3、およびRBE4)について、それらの構造と機能、さらに澱粉合成での役割を解析した。 RBE1のRBE3とRBE4に対するアミノ酸配列の相同性はいずれもほぼ50%であり、 RBE3とRBE4では約80%の相同性が見いだされた。 RBE1は、RBE3やRBE4よりもC末端に約50アミノ酸残基分だけ長い配列を有していた。反対に、RBE3とRBE4は、N末端に約70と90残基の余分な配列を含んでいた。いずれの酵素も、アミラーゼの活性ドメインを構成する4つの領域に対するコンセンサス配列を中央部に保存していた。転移酵素に属する枝つけ酵素がアミラーゼファミリーの一員であり、ひとつの酵素分子が伸長途中の、あるいは伸長したアミロース中のα-1,4結合の切断と生成したアミロース鎖の転移を行っていると考えられる。また、各種枝つけ酵素cDNAの大腸菌での発現系を確立させて、 RBE1のNおよびC末端からの欠失変異体、分子中のシステイン残基のセリン置換変異体、さらにRBE1とRBE3間でのキメラ酵素を作製した。 RBE1をC末端から55残基まで削除したものだけが活性を保持していた。また、 RBE1は分子中のシステインのうち、N末端から3、6、7番目のものが活性に重要であることが明確となった。さらに、 RBE1とRBE3のキメラ酵素の解析から、それぞれの酵素のNおよびC末端近傍の配列が酵素反応性に大きく関与していることが明らかとなった。一方、イネ登熱種子の可溶性澱粉合成酵素(SSS)をクローン化して、そのアミノ酸配列を顆粒性澱粉合成酵素(GBSS)と比較したところ、36%の相同性しか見いだせず、特にC末端付近の配列は相当に異なっていた。しかし、基質であるADPグルコースの結合部位を含む3箇所の領域はよく保存されていた。これらの結果は、基本的な酵素の反応様式はSSSとBSSの間で大きな相違はないものの、それらの基質の特異性や澱粉への結合性の違いを反映していると思われる。
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