A.nidulansのchsC、chsD遺伝子破壊株を作製しその表現型を検討したところ野生株と差が見られなかった。そこでChsA、chsC、chsDの各種二重遺伝子破壊株を作製した。その結果、chsCとchsDの二重遺伝子破壊株の表現型は野生株と変化が見られなかったが、chsAとchsDの二重遺伝子破壊株では分生子の形成効率が野生株の10%程度まで減少した。また、chsAとchsCの二重遺伝子破壊株では菌糸の密度が野生株に比べて粗になりまた分生子の形成効率が野生株の0.002%程度まで低下した。これらのことから、chsA遺伝子産物、chsC遺伝子産物は菌糸生長に関与することが推定された。またその遺伝子破壊株の性質より菌糸の先端生長に機能を持つことが明らかなchsBについてA.nidulansにおいて培地の炭素源の種類により発現制御可能なアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(alcA)のプロモーターの下流に連結した。これをA.nidulansに形質転換し分生子形成期に遺伝子の発現を抑制したところ、単位面積たりの分生子数が野生株の半分程度になった。このことからchsBの遺伝子産物は菌糸の先端生長のみならず分生子の形成にも関与していることが明らかになった。さらにchsA、chsBのプロモーターにE.coliのlacZをつないで発現を検討したところchsAは菌糸ではほとんど発現がみられず分生子形成におけるメトレとフィアライデで強く発現がみられchsBは菌糸でも発現しているがメトレとフィアライデで更に強く発現していることが明らかになった。
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