研究概要 |
環境汚染物質として知られるポリ塩化ビフェニル(PCB)を強力に分解する分解菌の育種をめざし、ベンゼン環の開裂を行なう分解のキ-酵素である2,3-dihydroxybiphenyl dioxygenase(23DBPDO)について一連の融合酵素を構築して解析した。PCB分解菌Pseudomonas sp.KKS102の23DBPDO遺伝子(bphC)とベンゼン分解菌P.putida BE81の3-methyl-catechol dioxygenase遺伝子(bnzC)とを大腸菌内での相同組換えを利用して融合酵素を構築して解析した結果、カルボキシル(C)末端側で組換わると基質特異性が明確に変化することを見いだした。C末端を欠くbphC遺伝子とbnzCのC末端領域とで相同組換えを利用した融合酵素を構築し、C末端で組み換わった融合酵素を集中的に取得したところ、基質特異性が変化する組換え位置は23DBPDOのアミノ酸残基の261番目から283番目の区間内に特定された。260番目までがbphCで261番目以降がbnzCの配列を持つ融合酵素遺伝子を素材とし、261番目から283番目の区間内でbphCとbnzCとの間で異なるアミノ酸残基を部位特異的変異手法(site-directed mutagenesis)を用いて順次置換したところ基質特異性が変化する組換え位置は270番目から283番目の区間内に限定された。この区間内でbphCとbnzCとの間で異なるアミノ酸残基を部位特異的変異手法により単独あるいは組み合わせて置換したところ最終的に280番目のアミノ酸残基(Thr)が単独で基質特異性を支配し得ることが明らかになった。一方、長岡技術科学大学・三井教授のグループとの共同研究においてKKS102の23DBPDOのX線結晶解析による3次元立体構造の解明に成功し、その知見から280番目のアミノ酸残基の側鎖による基質のフェニル基への立体障害の有無が基質特異性を支配することが示唆された。3次元立体構造の解明にも成功して構造に基づいた酵素の改良が可能になり、今後、更に本格的な酵素の改良が進められると期待される。
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