研究概要 |
カルシウムイオンは細胞増殖、分化、ストレス応答の調節、通常の細胞機能の調節など多様な機能を果たす。細胞質Ca^<2+>は低濃度に抑制されており、刺激に応答して瞬時にCa^<2+>濃度を上昇させて酵素等の機能を調節する。Ca^<2+>は細胞外と細胞内Ca^<2+>集積部位から供給され、情報伝達が完了すると再び回収される。植物の場合、細胞壁画分と液胞がCa^<2+>の主要な集積部位となっている。液胞への能動輸送はCa^<2+>/H^+対向輸送、細胞外への排出はCa^<2+>-ATPaseにより行われる。本研究では液胞に焦点をあて、液胞へのCa^<2+>能動輸送系とCa^<2+>蓄積に関する解析を進めている。同時に、Ca^<2+>能動輸送に関与するプロトンポンプ、H^+-ATPaseとH^+-ピロホスファターゼ(H^+-PPase)の解析も行った。 ヤエナリおよびダイコンから調製した液胞膜を用いた実験では、数μMレベルのCa^<2+>を反応液に添加することにより膜小胞へのCa^<2+>の取込み活性が測定された。H^+-ATPaseとH^+-PPaseいずれのプロトンポンプを駆動してH^+勾配を形成させても同程度の活性が見られた。Ca^<2+>の輸送速度は、ATPaseあるいはPPaseによるH^+の輸送速度以上であった。現在、このCa^<2+>/H^+対向輸送系の可溶化とリポソームへの再構成系を確立しつつある。一方、液胞のCa^<2+>貯蔵機能に関連して、新規のCa^<2+>結合タンパク質(45kD)を見出し、精製した。液胞膜とは静電的に弱く結合しており、単分子として存在していると推定される。液胞のCa^<2+>貯蔵機能を促進するか否かを膜小胞および再構成系を用いて検討中である。なお、Ca^<2+>/H^+対向輸送系を駆動するH^+-PPase(80KD)については、cDNAをクローニングし一次構造を明らかにした。次年度は、Ca^<2+>/H^+対向輸送系の単離・同定、液胞Ca^<2+>結合タンパク質のクローニング,一次構造解析を中心に実験を進める。
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