細胞周期の進行はゲノムDNAの複製とその娘細胞への分配の過程を直接進行させる一連の機構と、この過程の正確さをチェックする機構が協調して働くことによって成立すると考えられる。後者の機構はチェックポイント調節と呼ばれ、DNA複製開始前、およびゲノム分配の前にDNAの損傷や複製の完了をチェックし、細胞周期を停止させるように働く。この機構は細胞の癌化や、癌化した細胞で観察される染色体異常等と深く係わっていると考えられ大きな興味が持たれている。我々がクローニングした出芽酵母の遺伝子NPS2(HND1)は、推定分子量役190Kの核蛋白をコードし、DNA合成阻害剤のヒドロキシウレアや、UV照射等に感受性というチェックポイント機構に欠損を持つ変異株と同様の表現型を示し、この機構に関する新しい遺伝子と考えられた。本研究はNPS2の機能解明を目的として実施し、以下の結果を得た。 1)NPS2破壊株を同調培養し、細胞周期の各時期でのDNA損傷に対する感受性を比較した結果、G1/S期における感受性は野菜株と同等であるが、G2/M期での感受性が増大することが明らかになり、本遺伝子はG2/M期のチェック機構に係わる事を明らかにできた。2)MPS2破壊をhomoに持つ2倍体は胞子形成培地中で2回の核分裂の後、核の崩壊を起こして死滅することを見いだし、本遺伝子は減数分裂過程に必須なものであることを明らかにした。3)nps2変異株はG2/M期に必須な遺伝子MPS1の高発現に依存して成育用区政を受ける。NPS1とNPS2との機能的関連を明らかにするため、two hybridシステムによる解析を行った結果、両蛋白間には直接の相互作用はないが、Nps1pは何らかの転写因子と結合しうること、この結合をNps2pが細胞周期依存的に調節している事を示す結果を得、現在、当該因子のクローニングを試みている。
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