研究概要 |
安価な合成原料であるフマル酸誘導体へのアンモニアの付加反応を触媒するメチルアスパラギン酸アンモニアリアーゼを検索し、非天然型のL-アスパラギン酸誘導体の選択的な合成を検討した。天然界からの微生物のスクリーニングの対象としては、好気性菌のみならず、従来あまり省みられなかった嫌気性菌や通性嫌気性菌をも広く対象とした。(S)-グルタミン酸を含む培地で集積培養を行い、顕著な3-メチルアスパルターゼ活性を有する通性嫌気性菌を4株得た。各種菌学的性状より、それらをCitrobacter freundii、Morganella morganii、Citrobacter amalonaticus、およびEnterobacter sp.と同定した。培養条件を種々検討したところ、同酵素は(S)-グルタミン酸及びthreo-(2S,3S)-3-メチル-アスパラギン酸によって強く誘導され、静置培養時においてのみ産生された。各菌の無細胞抽出液を用いてメサコン酸、エチルフマル酸およびクロロフマル酸に対するアミノ基付加反応を行い、それぞれ光学的に純粋なthreo-(2S,3S)-3-メチル-アスパラギン酸、threo-(2S,3S)-3-エチル-アスパラギン酸、threo-(2R,3S)-3-クロロ-アスパラギン酸を好収率で合成した。C.freundii、M.morganii、およびC.amalonaticusの無細胞抽出液中より、各種クロマトグラフィーを経て本酵素をそれぞれ、28倍、39倍および24倍に精製、結晶化した。各酵素は偏性嫌気性菌であるClostridium tetanomorphum由来の本酵素と酵素学的諸性質において類似性を示したが、基質特異性は異なっていた。
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