研究概要 |
フマル酸を異性化しマフラーゼによってLーリンゴ酸に至るマレイン酸の代謝系が一般的に知られているが、マレイン酸を水和しDーリンゴ酸を生成するマレートヒドラターゼについては余り知られていない。そこで、強いマレートヒドラターゼを有する細菌Arthrobacter sp.の休止菌体反応によるマレイン酸からDーリンゴ酸の製造検討を行った。さらに本酵素を精製しその諸性質を明らかにした。また安価なイタコン酸を基質とし、土壌由来の細菌Alcaligenes denitrificansの菌体反応による(S)-(+)シトラマル酸の製造を検討した。光学純度は99.9%であった。反応30時間で28g/literの(S)-(+)シトラマル酸(交換率は80.0%、モル収率は68.8%)が蓄積した。 安価なフマル酸誘導体へのアンモニアの付加反応を触媒するメチルアスパラギン酸アンモニアリアーゼを検索し、非天然型のL-アスパラギン酸誘導体の選択的な合成を検討した。(S)-グルタミン酸を含む培地で集積培養を行い、顕著な3-メチルアスパルターゼ活性を有する通性嫌気性菌Citrobacter freundii、Morganella morganii、Citrobacter amalonaticus、およびEnterobacter sp.を得た。各菌の無細胞抽出液を用いて、それぞれ光学的に純粋なthreo-(2S,3S)-3-メチル-アスパラギン酸、threo-(2S,3S)-3-エチル-アスパラギン酸、threo-(2S,3S)-3-クロロ-アスパラギン酸を好収率で合成した。上記の菌の無細胞抽出液中より、本酵素を結晶状に精製した。各酵素は偏性嫌気性菌であるClostridium tetanomorphum由来の本酵素と酵素学的諸性質において類似性を示したが、基質特異性は異なっていた。
|