研究概要 |
「プロリン説」を検証するため下記の項目について検討を行った。 プロリン置換導入変異酵素の作成…中温菌Bacillus cereus ATCC7064のオリゴ-1,6-グルコシダーゼ遺伝子上に、好熱菌Bacillus coagulansATCC7064とBacillus thermoglucosidasius KP1006由来の同酵素でプロリン残基に置換される箇所を指定し、部位特異的変異により、プロリン残基への置換導入を累積的に行った。すでに9箇所(Lys121(Mut-1),Glu175(Mut-2),Glu290(Mut-3),Glu208(Mut-4),Glu270(Mut-5),Glu378(Mut-6),Thr261(Mut-7),Glu216(Mut-8),Asn109(Mut-9)の変異導入を行って、構造特異性を保った加算性をもつことを示しており、さらにこの事実を確立するため、3箇所(Lys457(βターン、Mut-10),Thr440(可動ループ、Mut-11),Ile403(αヘリックス、Mut-12))をMut-9に引き続いて行った。これらの変異酵素は、Mut-9までの変異酵素と同じく、酵素機能と構造において顕著な損傷を受けなかった。そしてβターン(Mut-10)とαヘリックス(Mut-12)での置換導入は、耐熱性の向上をもたらし、可動ループ(Mut-11)での置換導入は、逆に耐熱性の低下を引き起こした。この結果は、これまでの結果と完全に一致し、耐熱性向上に有利に働くプロリン残基の、構造特異性があることを示すものであった。 熱安定性の評価についての考察…これまで行ってきた耐熱性の評価は、活性を指標とした不可逆失活を追跡するものであり、可逆性の中での構造変性の追究を行ってみた。そこで塩酸グアニジンを用いて、蛍光強度の変化を測定することによりB.cereus由来の野生型酵素と、Mut-10からMut-12までの変異酵素について可逆変性を調べてみた。pH.7.0、25°Cで1時間処理をすることにより、変性状態は安定化したが、可逆平衡を示さず、いずれの酵素も不可逆変性を起こす事が判った。不可逆な塩酸グアニジン耐性においては、耐熱性評価と同様な変異酵素と野生型酵素の耐性の違いが観察された。好熱菌B.thermoglucosidasius KP1006由来の酵素について、塩酸グアニジンを用いた変性実験を行うと、この酵素は、顕著に可逆性を示し、塩酸グアニジンの濃度も、B.cereu由来の酵素に比べ高い耐性を示すことが判った。
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