研究概要 |
プロリン残基置換導入変異酵素の耐熱性に関する評価・・・昨年度はオリゴ-1,6-グルコシダーゼの野生型と12種のプロリン残基置換導入変異酵素について、蛍光分析を用いた塩酸グアニジンによる可逆変性を追求した。その結果、これらの酵素タンパク質群では可逆変性を顕著に見い出すことが出来ず、不可逆変性状態での評価にとどまった。そこで本年度は、熱量測定を用いた可逆変性による耐熱性の評価を行った。熱量測定では、塩酸グアジニン変性で確認できなかった可逆性を、野生酵素及び変異酵素の両方において認めることができた。Tm (50%変性温度)値は野生型49.3°C、 Mut-1が50.6°C、 Mut-4が52.9°C、 Mut-7が53.1C、 Mut-9が54.3°C、 Mut-12が54.7°Cで、活性に伴う50%失活温度からいずれも4.6〜5.0°Cシフト上昇していた。しかし両者における傾向は、全く同じものであり、プロリン残基による耐熱性の上昇は、不可逆、可逆の両方において確認することができた。 プロリン説に基づくタンパク質耐熱化の一般則のまとめ・・・今回の研究から、構造と機能を損なわないプロリン残基の置換に基づくタンパク質の耐熱化は、αヘリックスのN1座位とβターンの第2座位がもっとも有効であり、可動ループにおけるプロリン置換はあまり効果を持たないことを示した。しかしこれらのプロリン置換は、いずれも耐熱型の酵素においてプロリン残基に置換されている箇所での置換効果を追求したものであり、耐熱型酵素で保証されていない座位での置換、例えばβターンの第2座位にあるMet342の場合、プロリン残基に置換しても耐熱性の変化は見られず、コンホメーション角の適合性だけでは有効な変異につながることが保証できないことが判明した。
|