研究概要 |
本研究は、ミツバチ由来の抗菌ペプチド"アピデシン(apidaecin)"に注目し、これを動植物への感染防止や、食品保存に応用するためのモデル抗菌ペプチドと位置づけ、実験進化の手法を開発することを目的としている。本年度は、初期の目標の第一項目である「野性型アピデシンから種々の誘導体を得、一次構造と機能(抗菌活性)との相関を検討すること」を実施した。このため、ヒドロキシルアミン処理およびPCRによる限定域in vitroランダム突然変異とin vivoスクリーニング系を組み合わせた独自の方法(本来アピデシン感受性の大腸菌の宿主ベクター系であえて変異アピデシンを発現させ、活性変異体を分離できる方法)を駆使し、多数の「低活性変異体」を得、塩基配列決定による変異点の解析を行った。その結果、18残基からなるアピデシン分子のうち、複数のプロリン残基およびC末端側がアピデシンの活性に大きく関与していることが分かった。多くの変異体ペプチドを分離精製することは時間的に困難なので、ここで用いた抗菌活性評価法は、上記大腸菌宿主ペクター系を巧みに応用したin vivoアッセイ系による簡便法である。この簡便法による活性評価が、実際にin vitroでの活性評価と一致しているかどうかを確認するため、3種の低活性変異体(P6L,P13Q,P14L)から変異アピデシンを融合タンパク質として発現、アピデシン分子を遊離切断後精製し、大腸菌をインディケーターとして直接活性測定を行った。その結果、明らかにin vivo系とin vitro系での活性評価に相関性がみられ、上記の結論を裏付けることができた。 次年度は、これらの成果を基盤として、目標の第2項目である「実験進化による高活性アピデシン変異体取得」の可能性にチャレンジする予定である。
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