研究概要 |
本研究は、ミツバチ由来の抗菌ペプチドで、18アミノ酸残基からなる“アピデシン"(apidaecin)に着目し、これを動植物への病原菌の感染防止や食品保存に応用するためのモデル抗菌ペプチドと位置づけ、実験室内進化の手法を開発することを目的とした。平成7-9年度の3年間で得た成果は次の通りである。 まず、アピデシン遺伝子に対してヒドロキシルアミンやPCRによる限定域ランダム突然変異と、独自に開発したin vivoアッセイ・スクリーニング系を組み合わせ(本来アピデシン感受性の大腸菌宿主ベクター系であえて変異アピデシンを発現させ、活性変異体を分離できる)、多数の低活性変異体を得ることに成功した。これにより、アピデシン分子のC末端領域や、Pro,Arg残基が活性発現に重要であるというような「機能マッピング」が可能になった。また、この機能マッピングをさらに完成させつつ、上記in vivoアッセイ系(多数サンプルに対応可)が直接活性を測定するin vitroアッセイ系と明らかな相関関係にあることを確認、さらに高活性変異体スクリーニングに有力なアンピシリンスクリーニング用宿主ベクターを構築、目的とする高活性変異体を10^2-10^3倍に濃縮しうることを確認した(初年度)。次いでアピデシン生産法の工夫、高活性変異体取得への予備実験、抗菌作用メカニズム解明の予備実験等を経て(2年度)、最終年度ではこれまでの成果をふまえ、活性に必須と考えられるアミノ酸残基以外の残基をランダマイズするようアピデシン遺伝子を化学合成し、その結果、高活性型変異アピデシンを取得するに至った。また、アピデシン以外の抗菌ペプチドとして、グラム陰性・陽性細菌のみならず、真菌にも作用するカメムシ由来の「タナチン」についても本研究で開発した方法論を適用し、アピデシン同様多数の変異型タナチンを取得することができ、本実験室内進化系の汎用性を証明しえた。
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