昨年度で、枯草菌グルコン酸オペロンのリプレッサー蛋白質の分子遺伝学的手法を用いた機能構造の解析を終了した。そして、その研究成果のうち、グルコン酸の結合ドメインの解析についてはJ.Bacteriol.177:4813(1995)に、またリプレッサーとオペレーターの相互作用に関する解析はMol.Gen.Genet.248:583-591(1995)に発表した。本年度も、X線解析に耐えるリプレッサー蛋白質の単一の大型結晶を得るための種々の結晶化条件を試みた。さらに、これまでの研究で作成した5種類のDNA結合を失った変異レプレッサーを精製し、これらの変異蛋白質の結晶化も検討した。しかしながら、本蛋白質は、小型の針状結晶を生じるだけで、どうしてもX線解析に耐える結晶を生成させることが出来なかった。本リプレッサーは、本来重合しやすくこれが良質の結晶形成の妨げになっていると思われる。この結晶化と平行して、リプレッサーと誘導物質の相互作用の詳細なキネティクスをフィルター結合法を用いて解析した。本蛋白質は、誘導物質であるグルコン酸やグルコノ-δ-ラクトンが存在すると濃度20μMを境にオペレーターとの結合能を失う。しかしながら、これらの誘導物質の濃度をさらに増加させると(1mMまで)オペレーターに依存しない非特異的なDNA結合能が増加する。このリプレッサーの非特異的なDNAとの結合能の誘起は、誘導物質に特異的であり、この結合能の生理的意義を検討中である。数年前、本研究対象としているGntR蛋白質を代表とするバクテリアの制御蛋白質の亜集団(GntRファミリー)が提唱され、国際的に認知されるに至っている。このところのバクテリアのゲノム解析の進展に伴い数多くの遺伝子産物がこのファミリーに属し、helix-turn-helixモチーフをもつ制御蛋白のファミリーの中で、3番目の多くの構成集団を形成することが明らかになってきている。このGntRファミリーの制御蛋白質の機能に関してデータベースより情報をあつめこれらの蛋白質の機能分類を行った。
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